純粋ゆえに狂気に苛まれる少女の数奇な物語 『Fran Bow』

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Fran Bow』は猟奇的かつショッキングな表現を多分に含むホラーアドベンチャーゲームです。

しかしそれだけに収まることはなく、少女Franが悲しみに、苦しみに耐え、受け入れながらも幸せを求め、成長していく姿をも描いたハートフルな一面も持っており、ここにただのホラーアドベンチャーで終わらない良さがあると私は感じます。

少女にとって最悪の展開から物語は始まる。

みんなよかった。まるで天国にいるかのような気分だった…恵まれていた少女をどん底に落とすには、無残に惨殺された両親の死を目の当たりにするだけで十分でした。最も幸福だった少女Franは、一転して最も不幸な少女になってしまったのです。

『Fran Bow』は精神障害と理不尽な運命に苦しむ少女Franの物語です。惨殺された両親を見てしまった彼女は、彼女の唯一の友だちである、かつて両親がプレゼントしてくれた猫―Mr.Midnightと共に森へ逃げ込みます。しかし、ショックのあまり逃げ込んだ先で力尽き、二人の人影に抱えられ連れ去られてしまう彼女を、Mr.Midnightは心配そうに見つめることしか出来ませんでした。

悪夢から目覚め、Oswald Asylumの医者の一人、Dr.Deernに現状を伝えられるところからいよいよゲーム開始となります。

 

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ゲームとしては古典的なポイント&クリック式アドベンチャーであり、それに会話選択肢、アイテム合成、そしてこのゲームを語る上で最大の鍵となるPills(薬)が入ってきます。

Pillsは元々、前述したDr.DeernがFranの精神障害を和らげるために処方したのですが、思惑とは裏腹にFranに非常にショッキングな幻覚を見せてしまうことになります。気絶した彼女は3日間眠っていたと後に判明しますが、夢の中でMr.Midnightから伝えられたことがあったのです。

「Fran、Pillsはこの病院から抜け出すために役立つんだ!僕は森の中で待っているよ」

殺人犯を知りたいと共に、おばであるAunt Graceや唯一の友だちである猫、Mr.Midnightを探すためにもFranはOswald Asylumを抜け出すことを決意します。

 夢か現実か

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ひとたびPillsを飲めば…

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ショッキングな光景に…しかし新しい道やアイテムが見つかることも

精神障害が引き起こす幻覚はFranの悩みの種でありながらも真実へと導く要素でもあるため、基本的にはPillsを飲んだり飲むのをやめたりしつつストーリーを進めていくことになります。パズルや謎解きもありますが、一部難しいものを除けばそれほど詰まることなく解ける内容です。

彼女の見るもう一つの世界は血にまみれ、グロテスクな物に溢れていますがこれは惨殺された両親を見た際に植え付けられたトラウマが関わっているのでしょう。

夢なのか現実なのか分からない世界を彷徨う過程でとてつもなく恐ろしいことを目にしても、立ち塞がろうとも、痛みを受け入れつつ彼女は真実を知るために前へ前へと進んでいきます。そのひたむきな姿勢が非常に強く胸をうつのです。

アドベンチャー界のビッグタイトル間違いなし

とにかく非常によく動きます。一枚一枚丁寧に描かれたキャラクター、背景のアニメーションを見るだけでも価値があるし、なによりFranの細やかな動作が可愛いので買いましょう。買うべきです。やはり特筆すべきはビジュアルであり、ビジュアルでピンと来た方は間違いなく買いでしょう。英語もそれほど難しくはなく読みやすい部類であるため、少々分からない単語が出てくれば辞書で引く程度の努力で済むと思います。

作品自体のボリュームは十分です。私はクリアまでに20時間を費やしましたが、正直時間を忘れてのめりこんでいました。作品全体のビジュアル、音楽、ストーリーが大変よくマッチしており、没入感は非常に優れています。様々な舞台で繰り広げられるFranの奇妙な冒険はあなたの心にも深く刻まれることでしょう。

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進めていくとファンタジックな風景にも出会えます