これぞ宇宙船ロールプレイの傑作『Elite:Dangerous』
「そうやってすぐ違法行為を助長する」
「何を仰るのです。自分はただ、就職希望者を送迎バスに乗せて20光年先に永久就職させて、マージン料としてほんのお気持ちばかりのお金を頂いているだけですよ」
「字面は良いけど、端的に言えばこれ密輸した奴隷を売り飛ばしてるだけじゃないですか!!」
それもまた、Elite:Dangerous。
宇宙船ロールプレイングシミュレーター『Elite:Dangerous』
西暦3301年―Frame Shift Driveによって星間移動が可能となった遥か未来、人々は生きる新たな道を歩み始めました。
ある者は採掘業を営み
ある者は宇宙を駆ける商人となり
ある者は賞金稼ぎとして
ある者は海賊行為を働き
ある者は未知なる惑星の情報を探し
そして私は…
密輸商人としての道を選んだのでした。
生まれた瞬間アウトロー
Elite:Dangerousを開始した瞬間は1,000CRほどにはんぺんと呼ばれるちっぽけな船しか持っていません。
装甲も貧弱でカーゴの容量も小さく、Frame Shift Driveによる一回のジャンプ距離も燃料もすべて貧弱なこの船で一体何をするのか。いや、何が出来るのか考えたとき、目の前にあったミッションがそう、奴隷運搬だったのです。
奴隷運搬に限らず麻薬を運ぶ、禁制品を輸出するなど、大抵の星々で禁止されている行為を家業にする者を通称Smuggler、密輸商人と呼びます。
禁止されているだけあって、一度に運ぶ数が少なくともその価値は流通品よりも遥かに高く、カーゴ容量が小さい序盤では非常に金銭効率がいい行為。
それこそが密輸です。
正直言いましょう。密輸は素晴らしいです。
密輸行為はバレれば罰金を取られ、評判も下がりますが、そんなデメリットなんか気にならないほどにメリットが大きいです。どれくらい大きいかと言うと…。
二日でMerchant。※合計3,760,000CR稼ぐ。
序盤のTrade(流通品交易)ミッションや通常運び屋ミッション(禁制品でない)の報酬が10,000CRくらいなら、密輸ミッションは平気で100,000CRとか貰えたりします。しかも渡された物を別の場所に運ぶだけ。これぞイリーガルの醍醐味。
心なんて痛みません。
麻薬を運んでも人を幸せにするおくすりを運んでるだけと考えましょう!
奴隷を運んでも就職困難者に職を与えるため、送迎バスで離れた星に運んであげて運賃を頂いていると考えましょう!
さあ、今日から貴方も密輸商人。
密輸で貴方の夢を叶えましょう。
私は…
人を売ったお金で第二の人生スタート
とはいえ序盤の密輸は所詮手段としてのもの。
本当はしたいことがあって仕方なくやりました。
なんて言っても誰も咎める人はおりません。
私は稼いだお金(※密輸オンリーで13m稼ぎました)を新しい船に全て注ぎ込み、散々密輸を働いた星々からトンズラするためにFederalに媚を売り続け、ついに…
故郷である太陽系へのアクセス権を得て、地球圏下へと戻ってきたのでした。
密輸商人である過去は捨てて、宇宙漂流物を回収して生計を立てるスカベンジャーとして生きるために…。
そして遂に宇宙ステーションへ辿り着き、ドッグへ入港し、ここで私の新たなる人生が幕を開けるのだと想いを馳せながら掲示板を開くと…。
数100光年離れた太陽系でも明らかにSmuggler扱いのラインナップ。
罪の重さを感じた瞬間でした。
星を捨てて飛んできても船を変えても、
「お前の顔に密輸商人って書いてるよ」
と言われてるかのようなこの掲示板のラインナップ。ドクロマークから愛されすぎてつらい。
最早、真っ当に生きるには手を汚しすぎたCMDR Akimi Ishibashiの末路でありました。
もう少しだけ続く未来
そんなこんなで微妙に凹んでしばらく隠居していたEliteですが、あるコミュニティゴールに参加し一気に15m稼いだことで戦闘船を買うことになりました。
その名はVulture。
電源がひどいことを除けば硬くて火力も及第点の優等生です。
輸送船や多目的船とは比べ物にならないほど旋回性能が高く、流石は戦闘船といった実力を遺憾なく発揮してくれます。
今のコミュニティゴールは帝国反乱軍vs帝国の紛争なのですが、帝国側について今日も宇宙を駆け抜けております。
戦闘は難しくてやらないと思っていたけれど、やってみれば戦闘もそこまで難しいわけではなく、とても楽しいElite:Dangerous。やれることがたくさんで、友だちと遊べばもっと楽しい良いゲームです。そのうち、惑星に下りることが出来るDLCなんかも既に予約開始されていたりして目が離せません。
さあ、今日からElite:Dangerousを購入してあなたも今日からGood day,Commander!
純粋ゆえに狂気に苛まれる少女の数奇な物語 『Fran Bow』
『Fran Bow』は猟奇的かつショッキングな表現を多分に含むホラーアドベンチャーゲームです。
しかしそれだけに収まることはなく、少女Franが悲しみに、苦しみに耐え、受け入れながらも幸せを求め、成長していく姿をも描いたハートフルな一面も持っており、ここにただのホラーアドベンチャーで終わらない良さがあると私は感じます。
少女にとって最悪の展開から物語は始まる。
みんなよかった。まるで天国にいるかのような気分だった…恵まれていた少女をどん底に落とすには、無残に惨殺された両親の死を目の当たりにするだけで十分でした。最も幸福だった少女Franは、一転して最も不幸な少女になってしまったのです。
『Fran Bow』は精神障害と理不尽な運命に苦しむ少女Franの物語です。惨殺された両親を見てしまった彼女は、彼女の唯一の友だちである、かつて両親がプレゼントしてくれた猫―Mr.Midnightと共に森へ逃げ込みます。しかし、ショックのあまり逃げ込んだ先で力尽き、二人の人影に抱えられ連れ去られてしまう彼女を、Mr.Midnightは心配そうに見つめることしか出来ませんでした。
悪夢から目覚め、Oswald Asylumの医者の一人、Dr.Deernに現状を伝えられるところからいよいよゲーム開始となります。
ゲームとしては古典的なポイント&クリック式アドベンチャーであり、それに会話選択肢、アイテム合成、そしてこのゲームを語る上で最大の鍵となるPills(薬)が入ってきます。
Pillsは元々、前述したDr.DeernがFranの精神障害を和らげるために処方したのですが、思惑とは裏腹にFranに非常にショッキングな幻覚を見せてしまうことになります。気絶した彼女は3日間眠っていたと後に判明しますが、夢の中でMr.Midnightから伝えられたことがあったのです。
「Fran、Pillsはこの病院から抜け出すために役立つんだ!僕は森の中で待っているよ」
殺人犯を知りたいと共に、おばであるAunt Graceや唯一の友だちである猫、Mr.Midnightを探すためにもFranはOswald Asylumを抜け出すことを決意します。
夢か現実か
精神障害が引き起こす幻覚はFranの悩みの種でありながらも真実へと導く要素でもあるため、基本的にはPillsを飲んだり飲むのをやめたりしつつストーリーを進めていくことになります。パズルや謎解きもありますが、一部難しいものを除けばそれほど詰まることなく解ける内容です。
彼女の見るもう一つの世界は血にまみれ、グロテスクな物に溢れていますがこれは惨殺された両親を見た際に植え付けられたトラウマが関わっているのでしょう。
夢なのか現実なのか分からない世界を彷徨う過程でとてつもなく恐ろしいことを目にしても、立ち塞がろうとも、痛みを受け入れつつ彼女は真実を知るために前へ前へと進んでいきます。そのひたむきな姿勢が非常に強く胸をうつのです。
アドベンチャー界のビッグタイトル間違いなし
とにかく非常によく動きます。一枚一枚丁寧に描かれたキャラクター、背景のアニメーションを見るだけでも価値があるし、なによりFranの細やかな動作が可愛いので買いましょう。買うべきです。やはり特筆すべきはビジュアルであり、ビジュアルでピンと来た方は間違いなく買いでしょう。英語もそれほど難しくはなく読みやすい部類であるため、少々分からない単語が出てくれば辞書で引く程度の努力で済むと思います。
作品自体のボリュームは十分です。私はクリアまでに20時間を費やしましたが、正直時間を忘れてのめりこんでいました。作品全体のビジュアル、音楽、ストーリーが大変よくマッチしており、没入感は非常に優れています。様々な舞台で繰り広げられるFranの奇妙な冒険はあなたの心にも深く刻まれることでしょう。